しかし、それとはまた別の理由で、子どもたちは、この古い円形劇場に来ることを好んだ。モモが個々に来てからというもの、今までにかつてないほどに、子どもたちは楽しく遊べるようになった。退屈な時間なんて、微塵もない。モモが、何か素晴らしい遊びを提案したわけでは決してなく、彼女は、単にそこにいて、一緒に遊んでいただけである。彼女がそこにいるだけで、なぜだかは誰にもわからないけど、子供たちに、とてもよいアイデアが浮かんで来るのである。彼らは、毎日、より楽しい遊びを発明していた。
蒸し暑く、重圧的なある日、10~11人ぐらいの子供たちが石段の上に座り、モモの帰りを待っていた。モモは、ときどき彼女がそうするように、近くをあてもなく散歩するために、少しの間、外出中だった。空には、分厚くて真黒な雲がぐずぐずと居座っており、まもなく雷が落ちんばかりの天気であった。
「うち、家に帰ろかな」そばに小さな妹を連れた女の子がった。「うち、雷こわい・・・」
「家に?」眼鏡をかけた男の子が聞いた。
「家に居たら、雷怖くないんか?」
「怖い」その女の子は答えた。
「じゃあここにいてもええのんちゃう?」男の子は主張した。
女の子は肩をすくめ、うなずいたしばらくすると、その女の子は口を開き、言った。
「モモ、全然帰ってこーへんね」
「それがなんやねん」今度は、ちょっとっだらしない服をきた男の子が会話に入ってきました。「たとえモモがいなくっても、俺たちは遊べるで!」
「そうね、でも何するん?」
「それはわからん。けど、ともかくなにかしようや!」
「何もアイデアがでてないやん。なにかいいアイデアがある人おるか?」
「俺あるよ。」女の子のような高い声をした、まんまるとした男の子がこたえた。「この廃墟全体を、大きな船に見立てて、冒険者として、未知の海を航海するんだ!俺が船長で、君が第一航海士。君が自然研究者、さしずめ大学教授だ。というのも、これは学術探検だからね。わかったかい?他の子たちはみんな乗組員をやってくれ」
「ねえ、私たち女子はなにすればええ?」
「女乗組員!これは未来の船や」
なんと良いアイデアであろうか。彼らはその探検ごっこをしようと試みた。しかしなかなかうまく団結できず、流れに乗せることはできなかった。ちょっとすると、みんなまた石段の上に座り込み、モモの帰りを待ったのであった。そして、モモが帰ってきた。
ざぶーんざぶーんざぶーん。
研究船あるご丸は高低する波に乗り、静かに揺れていた。静かな運航だが、船は力一杯に、南のサンゴの海へと、前へ前へ突き進んだ。
遠い昔から、その危険な水域を航海することを誰もしようとはしてこなかった。というのも、ここは、浅瀬や、サンゴ礁がおおく、座礁してしまう恐れもあったし、それに海の怪物がうようよしていたからだ。そして何より、ここには、「永遠なる颱風」と呼ばれる、かつて一度も収まったことのない熱帯の旋風を伴う嵐が居座っている。この「永遠なる颱風」は、まるで生き物、いや、狡猾な怪物のように、たえず、この海域を行ったり来たりしていたのである。彼の足取りは予測できない。そして、この台風の巨大な爪に捕まったが最後、マッチ棒の細さまで粉々にされるまで、彼はつかんだものを手放さないのである。
もちろん、研究船あるご丸は特別な手法で、この「永遠なる颱風」との遭遇に備えていた。あるご丸はその全体が、まるで剣のように弾力性があり壊れない性質を持つアラモントの鋼でできている。そして、特別な製造手法により、溶接部や縫い目がなく、それ一つで全体となっているのであった。
そんな船でも、もし、別の船長や他の研究団だったらば、この危険に自身の身をさらす勇気はなかっただろう。ゴードン船長には、しかし、その勇気があった。自信満々に、彼は司令塔から向こう奥にいる船員たちを見た。彼ら一人一人、それぞれの専門分野で試験を勝ち抜いた専門野郎たちである。
キャプテンの隣には第一航海士が立っていた。その男、ドンメル。すでに127回のハリケーンに打ち勝ってきた、昔堅気の実直な、海に生きる男である。
そのさらに後ろのサンデッキには、この学術冒険の研究リーダー、アイゼンシュタイン教授がいる。かれは、記憶力抜群の二人の助手、マウリーンとザラを連れている。この二人はそのものすごい記憶力を持ってして、図書館の代わりを務める。この三人は、彼らの精密機器の上にかがみこみ、彼らの難しい専門用語で、ひそひそと話し合いをしていた。
彼らから少し離れたところに、この地方出身の美しいモモザンが、足を組んで座っていた。ときどき研究員が彼女に、この海の特性について尋ねると、彼女は美しいフーラ弁で答えるのであった、フーラ弁を理解できるのは、教授だけである。
この学術探検の目的は、この「さまよう颱風」の原因をつきとめ、そして可能であるならば、その原因を除去し、また再び、他の船も航行できる海にすることだった。しかし、未だ、あたりは静まり返っており、台風の気配を感じることはできなかった
突然、船の監視台にいた男の叫びが轟き、船長の思考を遮った。「せせせ船長!」
彼は手をメガホンのように丸めて、下に向かって叫んだ。「私がくるってしまったのか、それとも私がガラスの島を前方に発見したのは現実なのか!」
船長とドンメルは、すぐに彼らの双眼鏡で、遠方を見た。アイゼンシュタイン博士や、そのアシスタントたちも、興味津々で、そばによってきた。美しいモモザンだけが、冷静に鎮座していた。彼女が属する民族の不思議なしきたりで、何かに対して好奇心をあらわにすることを禁じられているのである。
間もなく、ガラスの島に着いた、教授は、縄ハシゴで、船の外壁を伝いながら降り、透明な地面に降り立った。この島の地面は、とてもツルツルしていて、アイゼンシュタイン教授は、彼の二本の足で、立っているのが精いっぱいだった。この島全体は、まるく、そして、直径はおおよそ20mといったところだった。
その島の真ん中は、ドームのようになっていた。教授はその頂上に到着するなり、この島の内側不覚に、明らかな脈打つような光を目にした。彼は、彼のこの発見を、船の手すりでワクワクしながら待ってる他の人たちに伝えた。
「となると、、」マウリーン助手が言った。「これはきっとオッゲルムンプフ・ビストロズィナリスだわ」
「ありうるわね」ザラ教授が同調する。「でも、シュルックラ・タペツシフェラってこともありうるわ」
アインシュタイン教授が立ち上がり、ずれたメガネを元に直し、上に向かって叫んだ。「私の見解では、これは単に、よく知られているシュトルンフス・クヴィートィシェンヌスの変種ということで、いいだろう。しかし、下からこれを研究するまでは、断定はできん」
教授がこういったのを受けて、下からこの物体を研究するために、三人の乗組員が、飛び込み、青い深い海に消えていった。彼らは世界的に有名な潜水の選手であり、合間にすでに、潜水服をきていたのであった。
しばらくすると、気法だけが海の表面に現れた。しかし、その直後、突然一人のザンドラという名前の女の子が水面から顔を出した。彼女は、息を切らせながら、言った。「これは、巨大くらげよ!残りの二人は巨大くらげの触手につかまってて、身動きが全く取れないの。手遅れになる前に、彼女たちを助けなきゃ!」
そう言い残して、彼女はまた海の中に消えていった。
つづく
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